駅前第四ビルが愛した植樹

何も持たない君に、武器はもう必要ない。

2015-07-28から1日間の記事一覧

死別のたしなみ

あの日、母は亡くなる寸前、苦しそうな息遣いの中で、私の名を呼び、ごめんなと言いました。 何に対してのごめんだったのかは、十年ほど過ぎた今でも、私には心当たりがまったくありません。 そう言えば、亡くなる前日、母はトイレで倒れていたらしく、よほ…

幸福と本能の葛藤

彼と彼女がおのれの幸福のために、本能と懸命に葛藤した数時間の物語です。 暗くてじめじめした場所でした。隙間から差し込む日の光が邪魔でしかたなくて、まるで亡者が踊りだしそうな暗闇でした。そんなところが彼の住処だったのです。生きるということは、…

認知症と悪魔と、夜中にかかってきた、病院からの電話

病院から電話がかかってきたのは、深夜でした。 叔母は腎臓の調子が良くなかったので、少し前から入院していました。私は自宅介護に疲れ切っていたから、正直に言えば、叔母が入院してくれて、心の中でほっとしていました。