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何も持たない君に、武器はもう必要ない。

自己嫌悪で自分が一番、嫌いだった夜

気が向いたので、少し私のことを記します。

自己嫌悪で自分が一番、嫌いだった夜

オヤジがガンを宣告された当時、私は仕事が忙しくて、きつい毎日をこなしていました。景気がよかったので、やりがいがあったのも事実ではありますが――。

「父は病室の壁を背にしながら、ソ連が来ると叫んだ」からの続きです。

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前の記事から読んでもらったほうが分かりやすいですが、この記事だけでも完結しているので、問題はありません。

ただしあの頃の私は、私自身のことがとても嫌いでした。

今だからそう思うのかもしれません。

とにかく当時の私は、朝、7時前に家を出て、日中工場で働き、納期を間に合わせるために残業をし、残業が終わると、京都にある塗装業者まで製品を運ぶという毎日でした。

私が塗装業者のもとへ着くころはもう、夜中の0時を回っていることも珍しくはなかったです。当然、待っている者は誰もいなかったですし、何百キロもある製品を一人でトラックから下すのですから、そこから先が更に大変でした。

当たり前のことではありますが、何百キロもある製品なんて、一人では担いで下せません。トラックから滑り下ろすようにして下すわけです。

結構なコツがいりますが、毎晩、私はそれをやっていたので、割合、苦労することもなく下すことができるようになっていました。

ただし、トラックいっぱいに積んである荷物ですので、下手をすると荷崩れして下敷きになるかもしれず、かなり危ないことを、平気でやってたんだなあと、今から思うと肝を冷やします。

たった一人で、夜中の真っ暗な中での作業は、たいてい一時間以上かかりました。

荷物を下ろすとようやく、私の一日は終わりです。それから家路につきます。京都から奈良の自宅までの帰り道は、車の少ない夜中でも1時間以上かかりました。

2トントラックを運転しながら、真っ暗な道路を走っていると、今日も一日が無事に終わったという安堵感と、無性にこういう毎日に嫌気がさしていたのも事実です。

まさに暗闇は毒だと言えるでしょう。

真っ暗な運転席で、家に帰るまでの一時間は、結構、たそがれるわけです。

肉体労働が辛かったわけではありません。商売をしていると、それ以上に嫌なものをたくさん見るんです。

たとえば一つ、例に出します。

私の会社は大手の下請けでしたが、担当者がよその業者をうまく使うために、私を悪者にしたりすることがたびたびありました。

私がまだ若かったせいだと思います。30代で甘ちゃんだった私は、利用するのに、うってつけの存在だったに違いありません。

よその業者から、私のあずかり知らぬことでクレームが入ってきたりしました。でもそれを担当者のせいにすれば、何らかの仕返しがあるかもしれない。だから黙る。黙れば余計に利用される、の悪循環でした。

大阪には「えげつない」という言葉があります。確かに商売人は「えげつない」です。

えげつないことは、他にもありました。

知り合いの塗装業者を、私が大手の担当者に紹介したとします。塗装業者は私の紹介で大手に潜り込めたので、とても感謝してくれます。

ところがしばらくすると、思いもかけないしっぺ返しを食らうことになります。

私の商売は納期が厳しくて、いつも仕事に追われる毎日でした。だから私の得意先は絶えず、質の良い下請け業者を探しています。私の会社が納期を遅らせるようなことがたびたび出てくると、担当者が私の連れてきた塗装業者に相談するわけです。

「どこかええ会社ないか?」

「それやったら、私の知ってるとこを紹介しましょか」

ということで、私が連れてきた塗装業者は、私の商売敵になる会社を呼び込んで、私の会社は苦しくなったという具合です。

相談された業者は私に対して恩義はあっても、担当者から良く見られたいがために、担当者に言われたように何でもやるわけです。

もちろん、その塗装業者はそれほどの悪人ではありません。なのに私の会社に対して、マイナスになるようなことを、平気な顔をして陰でやったりします。

こんな仕打ちは商売をやってれば、珍しいことではありません。誰もが経験していることで、取り立てて私がひどいことをされたとは思っていません。

それでも、孤独を感じているときには、弱気になることもあります。

私は夜中、京都から奈良へ帰る途中、周囲の灯りに見とれながら、昔、友人に言われた言葉を思い出していました。

私に長男ができたとき、その友人は祝うかわりにこう言ったのです。

「こんな世の中に、子供を産んでやるのは、かわいそうやで」

今でも私は友人のこの言葉に納得はできませんが、あのとき、2トントラックで夜中走っていた私は、無我夢中であったけれども、だからこそ、ほんの少し彼の言葉に同調していたと白状します。

人が好いというのは、ただそれだけで、十分に罪だと言えます。

私の子供のころの記事「スタンド・バイ・ミー、悪ガキたちが目指したデパートの屋上」へ続きます。

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最後まで読んでくれて、本当にありがとう。私は私なりに感じたことを感じたままに書き込んでいます。それで不快な思いをする人がいないことを、ひたすら祈って筆を置きます。

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